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執筆者の写真新谷 恭明

妖しい新聞記事


 佐藤直樹『定本 レッド』を読んでいた。第九話の扉部分は新聞の紙面を転写したかのようなデザインになっていた。連合赤軍事件をモデルにしているが、そうした一連の過激派について報じた紙面を彷彿とさせる効果を狙ったものだろう。

 映画とかドラマではよく事件を報じる新聞紙面が輪転機から出てアップになるみたいな絵柄で映し出される場面がある。かつての映画では新聞の見出しが一瞬目に入ればよかった、しかし、DVDが普及し、個人が自由に番組を録画できる時代になってからは条件は変わった。古い時代の映像を録画したものを一時停止させてみると、実際の無関係な新聞記事に見出しだけドラマの内容に合わせたものを刷り込んだ小道具が使われていることがある。それが録画時代になると、紙面の中の記事まできちんと作っているものが出てきた。つまり新聞紙面全体を小道具として作り出しているのだ。お手持ちのDVDや録画した番組などで検証されるといい。

 僕はそういうのを確認するのがけっこう好きだ。で、『定本 レッド』だが、新聞紙面の写真を流用するようなことはしていない。新聞紙面そのものを漫画として創作しているのだ。となると記事には何が書いてあるのだろうかと気になって、拡大してみてみた。

 左端の三段、写真(と思われる画)伸したから始まる段とそれが下に続く左側の二段を書き起こしてみた。画面が切れたりして読めないところは「・・・」としてある。

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 警視庁公安部は、「私たちがミシンを買った代金で郵便局を建てるなんて」として、七日中にもパトカーを追いかけたところ「失うはこの百年間、ナメ・・・・・・」


 世田谷区赤羽三ノ六ノ二ノ一〇の国道で不審な主婦約三十人が警官四人をしばりあげたうえ、朝食の用意をするため、十五分・・・・・・


 さらに「はじめの予定はリス三千匹で三百円ぐらいと胸算用して」ショールームに行くと、「きょうはウソで固めた約束だけ・・・・・・


 同朝八時ごろ、ウソで固めた主婦約三十人は低姿勢の焼イモ業Aさん(三四)を取囲み、「ひとりで二人、二人で三人。一分間に七十ー八十人が改札口のわきで死んでいる現在、裏切りのオフィスガールはショールームの前でガス爆発。間違いない。マッチでーす。」などと呼びかけたビラ二千五百五十八万発を配った。

 警視庁公安部は、伊豆大島の機械化だけにあき足りない学生が中心になって組織されたグループによるグループによる犯行とほぼ断定している。

 その理由は①トラックいっぱいのリスをたべたり、電話線をかじるなどのいたずらぶりにたまりかねた。②主婦たちのわきの後部から本物のミルクが出すぎてアパートの裏庭の地震エネルギーが急増しており、カチンときた。③私立商業高校生の自然発火から百年目。これを記念して十八匹のアレルギー性乳酸菌を一斉にしばりあげ、「北は北海道から、南は東横線祐天寺、東は私の寺の境内に。」などとテープレコーダーのような業務上過失罪を適用し、あるいは磁気化し、あるいは時間の流れを突破し、あるいは酒好きの夫にあきれ、あるいは家出し、あるいはハク製店強盗事件に関係し、あるいは都内の高校から相次いで退学し、あるいは残酷な気持をひるがえ・・・し、あるいはフー・・・あるいは昨・・・打ち計画中止の・・・いは「うちの子はけんかの・・・者、これから出直・・・教育者を射殺し・・・と激しく迫り、あ・・・ばい煙、もう一つ騒音・・・・・・

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 なんともシュールな内容である。おそらくはいくつかの文章を混ぜ込んだのだろうが、混ぜ込む技術がすごい。もしかすると新しい文学作品に活用できるのではないかと、ここに起こして掲載してみた。




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